摘要 : 神経変性疾患の病理学的特徴は，異常蛋白質蓄積と細胞死だといわれる。しかし，近年の分子遺伝学的あるいは分子生物学的な病態解析の結果，細胞死が起きる前から，神経細胞機能障害によつて神経変性疾患は発症することが明らかになつてきた。この事... 展开 神経変性疾患の病理学的特徴は，異常蛋白質蓄積と細胞死だといわれる。しかし，近年の分子遺伝学的あるいは分子生物学的な病態解析の結果，細胞死が起きる前から，神経細胞機能障害によつて神経変性疾患は発症することが明らかになつてきた。この事実は一見，変性病態あるいは変性治療における細胞死の重要性を低下させたように感じさせる。しかし，細胞死は，特に神経細胞死はヒトが長い年月をかけて蓄積してきた情報（海馬ニューロンであれば記憶情報，小脳や脊髄運動二ユーロンであれば運動情報）を失うことを意味している。これは，その個人の「人生の記憶」を失うことともいえる。したがって，将来仮に神経再生治療が実用化したとしても，細胞死のダメージは計り知れないものがあり，細胞死の臨床的重要性に変わりはない。 收起