摘要 : 準結晶は，AlとMnの合金中に最初に見出された，(周期)結晶，アモルファスに次ぐ新しい物質相であり，現在までに100種類以上の金属系準結晶が見出されている.また，近年では金属系に限らず，高分子系,ナノ粒子系や天然の準結晶も見つかっている.準結... 展开 準結晶は，AlとMnの合金中に最初に見出された，(周期)結晶，アモルファスに次ぐ新しい物質相であり，現在までに100種類以上の金属系準結晶が見出されている.また，近年では金属系に限らず，高分子系,ナノ粒子系や天然の準結晶も見つかっている.準結晶は，並進対称性と相容れない5回，あるいは10回回転対称性をもち，原子は周期的でもランダムでもない，"準周期"と呼ばれる長距離秩序をもって配列している.準周期構造の例としては，1次元の準周期構造であるフィボナッチ列や2次元の準周期構造であるペンローズタイルが良く知られている.フィボナッチ列は，F_1=Lとして，世代が進むごとにL→LS,S→Lの変換をすることによって生成される，F_1=L,F_2=LS,F_3=LSL,F_4=LSLLS,F_5=LSLLSLSL,…という非周期配列である.この変換規則はフィボナッチ数の定義式F_n=F_(n-1)+F_(n-2)(n≥3)と等価であり，各世代のSとLの数N_n~Sとは隣り合うフィボナッチ数になる.また，フィボナッチ数の一般項はF_n=(τ~n-(-τ)~(-n))/5~(1/2)(ただし，τ=(1+5~(1/2))/2=1.618…)と書けることから，N_n~S:N_n~Lはnが大きい極限で黄金比1：τに収束する.準結晶の結晶構造にも，例えばある方向に沿って見た回折斑点の間隔や準結晶表面に現れる2種類のステップの数の比など，黄金比と関係する構造が多く見出される.金属系準結晶は原子が100個程度集まった原子クラスタが3次元(あるいは2次元)的に準周期配列したものである.金属系準結晶をさらに3次元の準結晶に限定すれば，これまでに見つかっている3次元の金属系準結晶は，構造単位となる原子クラスタの種類によって3つのタイプ(Bergman型，Mackay型，Tsai型)に分類される.図1の左辺は，Tsai型準結晶の構造単位である菱形三十面体(Rhombic triacontahedron,RTH)クラスタであり，右辺に描かれた5つのクラスタが入れ子になった構造をしている.Tsai型準結晶の構造は，簡単に言えば，このRTHクラスタが準格子点上に配置したものとして理解される. 收起